Q : レーザーを使うとどんなことができますか?
A : レーザーの使い方は大きく二つの方向に分かれます.一つは,非常にスペクトル幅を細くしてエネルギー分解能を上げていくものです.精密な測定が可能になります.もう一つは時間幅をどんどん短くしていく方向です.これに関しては1990年代に現れたチタンサファイアレーザーという新技術によってものすごく発展しました.100フェムト秒(10-13秒)の光パルスが簡単に出せるようになったのです.現在では10フェムト秒のパルスが簡単に作れます.短い光パルスができればストロボ撮影の原理で速く動くものも止めて見ることができるのです.10フェムト秒というのは分子や結晶の中の原子の振動がとまって見えるくらいの短い時間です.これで光化学反応などの現象が手に取るように逐次追跡出来るようになりました.こういう技術を使ってわれわれは核波束の運動をムービーにすることができました.超高速現象の研究はレーザー以外の方法では全く研究不可能なので独壇場と言えます。
Q : 今一番興味を持っているのはどんなことですか?
A : 一つは,固定中の原子や分子のもっと複雑な運動をムービーとして記録することです.もう一つは,光で物質を変えていくことですね.光誘起相転移というのはその練習台のような研究なのですが,これを更に推し進めていくと,熱平衡状態を通っては絶対に到達できない物質の状態に光で持って行くという話になります.たとえば高温高圧のもとでグラファイトと同じ元素からダイヤモンドという素晴らしい特性をもった物質を作り出すことができるのですが,もしかしたら,光を使えばどんな圧力温度条件でも作り出せないような未知の物質を作り出せるかもしれません.まあ,これは夢のような話ですが.
|
PT-Brの核波束振動
VO2の光誘起相転移ダイナミクス
(テラヘルツ波の透過率変化) |