Q : 研究はどういう分野になりますか?

A : 光を研究手段として使う物性物理学なので光物性と呼ばれています。特にレーザー光源を中心にしますので、レーザー分光と言ってもよいですね。励起状態の物理とでも言えばよいでしょうか。キャッチフレーズ的には「先端レーザーによる物質科学」ということになります。

Q : どんな物質や現象を研究しているのですか?

A : これまでにいろいろな物質を手がけてきました。大学院で研究を始めたときは、イオン結晶や固体希ガスが対象でしたが、それから、酸化物のイオン伝導体やガラス、半導体や半導体超格子、希土類酸化物、超伝導体などを手がけました。最近では低次元系や光磁性を示す金属錯体がかなりの比重を占め、生体物質にも興味を持っています。単純なものからより複雑なものへと興味の対象が変化してきているように思います。
現象としては、さっきも言ったとおり励起状態とその緩和過程になるのですが
核波束ダイナミクス光誘起相転移のダイナミクスが中心課題です。

Q : レーザーを使うとどんなことができますか?

A : レーザーの使い方は大きく二つの方向に分かれます.一つは,非常にスペクトル幅を細くしてエネルギー分解能を上げていくものです.精密な測定が可能になります.もう一つは時間幅をどんどん短くしていく方向です.これに関しては1990年代に現れたチタンサファイアレーザーという新技術によってものすごく発展しました.100フェムト秒(10-13秒)の光パルスが簡単に出せるようになったのです.現在では10フェムト秒のパルスが簡単に作れます.短い光パルスができればストロボ撮影の原理で速く動くものも止めて見ることができるのです.10フェムト秒というのは分子や結晶の中の原子の振動がとまって見えるくらいの短い時間です.これで光化学反応などの現象が手に取るように逐次追跡出来るようになりました.こういう技術を使ってわれわれは核波束の運動をムービーにすることができました.超高速現象の研究はレーザー以外の方法では全く研究不可能なので独壇場と言えます。

Q : 今一番興味を持っているのはどんなことですか?


A : 一つは,固定中の原子や分子のもっと複雑な運動をムービーとして記録することです.もう一つは,光で物質を変えていくことですね.光誘起相転移というのはその練習台のような研究なのですが,これを更に推し進めていくと,熱平衡状態を通っては絶対に到達できない物質の状態に光で持って行くという話になります.たとえば高温高圧のもとでグラファイトと同じ元素からダイヤモンドという素晴らしい特性をもった物質を作り出すことができるのですが,もしかしたら,光を使えばどんな圧力温度条件でも作り出せないような未知の物質を作り出せるかもしれません.まあ,これは夢のような話ですが.


PT-Brの核波束振動



VO2の光誘起相転移ダイナミクス
(テラヘルツ波の透過率変化)

Q : 最後に,大学院を目指す人たちへのメッセージをお願いします.

A : まずは,研究が好きであることが第一です.
・ やる気にあふれている人(学部の成績にはこだわりません)
・ 朝から晩まで、実験や物理のことを考えていたい人
・ 世界中どこにもないような装置を作りたい人
・ 新しい物理現象を見つけてやろうという好奇心旺盛な人
こういう学生さんは大歓迎です。
具体的な研究内容については「Research」の欄を見てください.
そして興味を持たれた方は、遠慮なくメールなどで連絡ください.随時見学してもらうことができます.

  E-mail 末元: suemoto@issp.u-tokyo.ac.jp
   @を半角になおしてメールしてください。